BRUCE WEBER。
フイナムの読者にはおなじみの写真家かもしれません。
一連のヴィンテージTシャツブームの頂点に君臨(まさに君主として国を統治するかのように)して、もはやアートピースのような値付けで流通している、あのブルース・ウエイバーです。
もしかしたら逆に彼の写真そのものを見ている若いコ(この言葉もあまり使いたくないのですが便宜上)はあまりいないかもしれない。
Tシャツのモチーフとしての存在感の方が大きいかもしれませんね。以前、ポップアップでブルース・ウエイバーのヴィンテージTシャツを売っていたディーラーの方から話を聞いたのですが、確かカルバン・クラインのヤツで¥10万くらい、もっと高いものも売ってたかな?それらは他のTシャツに比べてそんなに利幅は取ってない、と。
つまり流通している値段が高騰しすぎていて売り手がそんなに暴利を得ているわけではないらしいんです。
ここ最近のブルース・ウエイバーTシャツ復刻ブームはそんなところも関係しているのでしょう。
僕らにとってのブルース・ウエイバーはやっぱり世界を代表するファッションフォトグラファーでしたし、それ以外の何者でもありませんでした。
敢えて言うなら『ファッションアイコン』ですよね。
トップデザイナーやモデルと同等に位置するっていう感じで。
一番最初に彼の写真を見たのはラルフ・ローレンのキャンペーンだったかGQか・・・もちろん御供さんか近藤さんか高比良さんの誰かに教えてもらったのは言うまでもありません。
その直後に出たのが「O RIO DE JANEIRO」ですよね。
ファッション写真集の最高峰であり、僕にとっては初めてビートルズを聞いた人が受けるのと同じくらいのショックを受けた一冊です。
今、こうして原稿を書きながら見返しているのですが、被写体、ロケーション、ヘア、そしてアートディレクションとどこを取っても衝撃が止まりません。
「なんでモノクロの写真の上にパープルの色ベタとか敷いてるの?」「裸に撫でつけただけのヘアスタイルなのになんでこんなにカッコイイの?」興奮と疑問の連続でしたね。
そしてそこからスタイリストのジョー・マッケナとかプロデューサーのナン・ブッシュの存在を知り、チームでのビジュアル作りの醍醐味を学ぶようになっていきます。
もっとミーハーな部分では、とにかくTシャツを買うことに血道を上げていきます。
NYのアンダーグラウンドなスタイリスト(のちにセックスアンドザシティで世界的に有名になる)パトリシア・フィールドのタグが付いているTシャツを手に入れようと原宿の「アストアロボット」へ。
2枚は買ったと思うけどボロボロになるまで着て、多分捨ててしまった。
その後はアニエスbが写真集「A LETTER TO TRUE」からTシャツ作って、あと僕の手元には「WEBER BUILT」という彼自身が手がけたファッションブランドからリリースされたチェット・ベーカーのTシャツがあります。
これは今も大切に着ています。
「WEBER BUILT」は前のボッテガ・ヴェネタのデザイナーだったトーマス・マイヤーがマイアミで営むショップで、そこの裏にある掘っ立て小屋でハンドメイドされている、という都市伝説があり、SHIPSのカタログ撮影でマイアミに行った時真偽を確かめにお店に行ったこともあります。
もちろん小屋なんかなくて、そこでは「WEBER BUILT」のキューバシャツをショートパンツにリメイクしたアイテムを買いました。
カッコ良かったんだけど直線断ちで異常に履きにくくて結局手放してしまった。もったいない・・・
(左「WEBER BUILT」、中「ビオトープ」、右「フリークス ストア」)
挙げ句の果てにはブルース・ウエイバー本人のカッコを真似てバンダナを頭に被ったりして。
思えばアホだったなぁ。
でも一人のフォトグラファーにそこまでハマったことは後にも先にも彼だけですね。僕の周りには愛犬に「ブルース」と名前をつけた人、二人はいるから。
どこまで行ってもファッションフォトの世界のトップ・オブ・トップに居続けると思って居た彼も、昨今のハラスメントの告発で第一線を退かざるを得なくなってしまいました。
潤沢な予算で映画ばりのセットやキャスティングで撮影するところに彼の良さがさらに増す、と僕は思っているのであのゴージャスでイノセントな世界観が堪能できないのは本当に残念です。話は飛びますが、テリー・リチャードソンもマリオ・テスティーノも、映画界ではウディ・アレンも(日本では彼の新作が観れるがアメリカでは公開されていない)同じような理由で業界からスポイルされているのは残念でなりません。
ブルース・ウエイバーに話を戻すと、アシスタント時代に高比良さんから「彼の写真集は初版しか印刷されないから必ず値上がりする。」と言われ無理して何冊も買いましたがリオデジャネイロ以外はプレミアはついてないみたいです。別にいいけど。
(家の本棚にあるブルース・ウエイバーの写真集)
では、では次回もお楽しみに。