ヌメロウーノはシーズンを追う毎に世に広まっていきました。
『履歴書 11』でBEAMS窪さんとのブランド、「Coffee and Milk」のことに触れていますが、窪さんからも後に「小沢くんがヌメロウーノで服作りを経験していなかったらC&Mは実現しなかった。」と言われました。
単なるスタイリストだけだと服作りは出来ないんです。
というわけで、C&Mも含めて派生ブランドも拡がりだんだん自分の守備範囲が分からなくなってきたのが2010年頃だったと思います。
雑誌のスタイリストやってブランドやってセレクトショップのカタログ作って・・・いつの間にか名刺には「スタイリスト 」と「ファッションディレクター」という二つの肩書きが入っていました。
今、こうして原稿書いてると「なんてイキった奴だ」って自分のことが恥ずかしくなりますね。
ファッションディレクターってなんなのよ、全く。
本当のファッションディレクターってもっと全然ステージが高い海外のトップブランドのクリエイティヴを担っているような人たちのための肩書きですもんね。
まぁ、そんなこといくら書いても仕方ないので当時のことをもう少し。
2011年、今度はウイメンズブランド『Intimate Diary/インティメイトダイアリー』をスタートさせます。
なぜウイメンズかと言うと、ヌメロウーノの展示会に来る女性たちが次々と個人オーダーを入れてくれて皆んな口々に「レディースやればいいのに。」って言ってくれて。
僕のファッションの引き出しにある、ある種の女性性というかコレクションから滲み出るチャーミングさ(自分で言うな!って一応ツッコミ入れときます)が彼女たちに響いたのかもしれません。
でもウイメンズは最後まで難しかった。
メンズとのファッションのサイクルが全然違うし何と言っても自分では着れないので詰めの一歩が足りなかった気がします。
ただ、今の時代「ジェンダーレス」とか「ユニセックス」が当たり前になっているので、その感覚が10年以上前から自分に備わっているんだということは身をもって体験できたことにはなりますね。
本来の服作りの話とは離れちゃいますが、名前をつけることが好きです。
ブランド名とかキャッチコピー的なこと。
このインティメイトダイアリーは「秘密の日記」という意味なんだけど、女性が心の中に閉まっておきたい色んな事柄を鍵の付いた日記に書き記している、そんなイメージから生まれたブランド名です。
コレクションの中身は置いといて名前はすごく気に入っている。
他にも誰も知らないと思うけど、MIWが一時期ウイメンズの店をやっていてその店名が『BABY GAME/ベイビーゲーム』、つまりソフィア・コッポラやXガールといったあの世代特有のガーリーな感じを込めた店名なんだけど、これまた秀逸だなと、我ながら。
他にもシュプリームの日本の運営会社『ワングラム』というのも僕が命名しました。
まだ大村(最近までシュプリームの社長だった)が独立したばかりの時、名前を考えて欲しいと頼まれ「たった一人の独立だけど1グラムという最小の重さで、でも重量はあるんだぞ。」という意味を表す社名としてつけました。大村もすごく気に入ってくれて良かった。
こう書いていくと肩書きって一体なんなんだろう?って思っちゃいますよね。
マルチタスクとか副業とか今はどんどん推奨される時代だし、もはや肩書きにこだわる方がおかしいのかもしれません。
でも僕は初めて会った人に自己紹介する時「スタイリストの小沢です。」って名乗れることがなんだか誇らしい。
今度お店をオープンしたらなんて名乗るんだろう。
僕のEDISTORIAL STOREはスタイリストならではの店にしたいのでやっぱり「スタイリストの小沢です。」って名乗れるような店にしたいなぁ。
さてもう少しで履歴書シリーズも書き尽くしたような気がしてきました。
あともう少しだけこんな話にお付き合いください。